大垣の料亭助六のちかげ女将です。
淡白な味の白身魚の鱧(ハモ)は夏の味覚の代表的なもので高級魚として知られています。
全長1~2メートル前後がメスの大きさで、オスはそれよりも小ぶり。あの繊細な料理が想像できないくらいの鋭く尖った歯を持つ獰猛な顔をしています。凶暴な外貌の印象通り、イカ・タコ・エビ・カニ類を捕食する肉食で、「ハモ」という名前も咬みつく「食(は)む」がなまり「ハモ」になったと言われているくらいです。
京都では「鱧祭」と呼ばれるものがありますが何のことかご存知でしょうか。京都の夏を彩る日本三大祭の一つである「祗園祭」のことです。鱧を食べると精がつくと言われなんと2万匹以上が食されるのだそう。このように「鱧祭」として異名を持つほど水揚げの無い京都では鱧が夏の味覚として定着しておりますが、それは一体なぜなのでしょうか。
魚介類の中でもずば抜けた生命力を持つ鱧
昔、海に面していない京の都では魚介類の調達には諸国からの輸送に頼らざるを得ませんでした。新鮮さが命の魚介類に長い輸送路は悩みの種で、天皇にお食事を差し上げる料理人たちは日々その鮮度と戦っていたそうです。しかし、注文をしても京都に届く頃には炎天下の中酸欠で死んでしまう魚介類ばかり。ですが、その中でなんと鱧だけが生き残るのです。鱧は非常に生命力が強いため大変重宝されたのです。
▲造り 鮪漬け、鱧、こち
「梅雨の水を飲んで育つ」と呼ばれる鱧の旬はまさにこれからの時期です。夏に産卵期を迎えることから旨みがあるのにさっぱりとした味が特徴的ですよ。また、梅雨明けの鱧は栄養価も非常に高いです。